うちの保育園では、一時預かりというのがある。(まあ、少なくとも、公立はどこでもやっていると思うが)もちろん、あらかじめ面談をして、アレルギーや持病、お迎えに来るのは誰かなど、その子の状況を把握し、登録したお子さんだけをお預かりするのだが、毎日来るわけではないので、なかなか顔を覚えられない。そもそも、定員の60名さえ、まだ顔と名前が一致しない子がいる・・・。
さて。
そんな新参者のわたし。
一時預かりの先生が、男の子を連れて、事務室に入ってきた。初対面の3歳児。鼻血が出ている。何かにぶつかったわけではなく、自然に鼻血が出て来たのだという。この子はよく鼻血を出す子なのだそうだ。
鼻血の子をケアするときは、こちらも手袋をする、というのがルールだ。その子の血液から何が感染するかわからない、職員を守るためのルールである。それはそうなのだろうとは思うが、ちょっと大げさな気もする・・・。
まあ、それはさておき。初対面の3歳児を預かったわたし。
とりあえず、事務室の中に子どもの椅子を持ち出して、そこに彼を座らせる。保冷剤をミニタオルにくるんで鼻翼のあたりを冷やしてあげる。うちのマニュアルには、「鼻血は20分鼻翼をおさえてあげる」と書いてある。
・・・事務室には2人だけ。わたしは彼の名前すら分からない。しまった。預かるときに名前を聞くのを忘れた。ただひたすら、『このおじちゃんはこわくないよぉ』というオーラを放出する。
ずっと黙っているのも空気が重いので、なんやかやと当たり障りのないことを話しかける。「今日の給食何だと思う?。シチューだよ。シチュー好き」こっくり頷く彼。鼻に保冷剤を当てられながら頷くのもタイヘンだ。「何歳?」彼は指で4を出す。「そうか、じゃあ、うちの園では赤い帽子のお友だちと一緒だね」彼、こっくり・・・
話が続かない。鼻血も止まらない。。。
でも、なんとなく、やさしい時間だ。なんだか、お互いに遠慮し合って、お互いにそっと思いやっているような。。。
こちらが笑いかければ、子どもも笑顔を返してくれる。
そのうち、彼はわたしがしているプラスチックの安いグローブが出すシャカシャカという音が面白いらしい。わざと音を出してやる。シャカシャカシャカ・・・。彼が面白そうにわたしに笑顔を向ける・・・
冬の日差しが明るい事務室の、ゆっくりした時間が過ぎていく。。。
今日はこのへんで。