園庭で走っていて、他の子と激突。前歯がズレてしまったアニオくん(仮名・4歳児クラス)。
・・・ズレたって何?。並んで生えている上の前歯の、右の方が左より奥まってしまっているのだ。
○○歯科医院到着。お母さんに合流。そのまま診察室へ。ここから、アニオくんはお母さんの膝の上だ。
女医さんが出て来た。ここは夫婦でやってる歯医者さん。状況を聞いたドクターが、アニオくんの前歯を診断。レントゲンを撮ることになった。
以前のレントゲン写真と見比べる。明らかに右の前歯がズレている。
ドクター曰く「永久歯の ”卵” が順調に育っているよ。今回のことは永久歯に影響ないと思う。力尽くで嬌声もできるけど、これから生えてくる永久歯のために、それはしないほうがいいなぁ」
・・・ふーん、そういうものなんだ。最優先なのは、大人の歯がどうなるか、だ。それが幼児。
お母さんの膝で安心しているアニオくん。
こんな時になんだが、母という存在の絶大な力を感じるわたし。そして、わたしも子育てというものに、ほんのちょっとだけ立ち会わせてもらってるんだな、という不思議な感傷をおぼえた。。。
しかし、今のままでは、かみ合わせがうまくいかない。現にアニオくんは、まだ口を閉じようしない・・・
「少し削って、かみ合わせに支障ないようにしましょう」
おお!とうとう削るのか。お母さんがずっとアニオをやさしくなでている。「だいじょうぶだよ、できるもんね?」。アニオくんも動揺するそぶりは見せない。へー、やっぱり、一度、同じ歯を欠いて受診しているから、もう歯医者が怖くないんだろうか。えらいぞ、アニオくん。わたしより強い。
副園長とわたしはここまで。待合室に出て待つことになった。
しばらくして、アニオくんを抱っこしたお母さん、やがてドクターが出て来る。
「・・・やっぱり、かみ合わせに支障が出ますね。このままだと、ご飯食べられないから、麻酔を掛けて、力で強制して、ボンドで固定しましょう」
アニオくん、もう泣いてはいない。
「しかし、しばらくして痛みが出てきたりしたら、最終的に抜くことになるかも知れません。そうすると、アニオくんは・・・、3年くらい前歯が1本ない状態になります・・・」
えええ?。アニオくん、当分、歯なし・・・???
後編に続く。