50代新人看護師、保育園に行く。で、ときどき落語

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「ザリガニの鳴くところ」。。。読後の感想文

 おはようございます。もうろうとしています。昨夜、読み終わりました。

 ディーリア・オーエンス「ザリガニの鳴くところ」。全世界1,500万部突破。

 

 寝不足になる面白さ。だから少し書いておきます。ネタバレあります!!!

 この小説は、大きく3つの要素で成り立っている。

 一、圧倒的に緻密で美しい自然の描写。。。

 二、たったひとり湿地に置き去りにされた少女の成長の物語

 三、法廷でのドキドキシーン。(あえて、ミステリーとは書かない。あくまで、私個人の感想ね♡)

 

 美しい自然の描写。。。

 作者は動物学者で、自身のフィールドワークを一般向けに書いたノンフィクションで、過去にもベストセラーになってるんだって。。。で、69歳で初めて書いた小説が、これ。もう、びっくりですね。

 1950年代のノースカロライナ州。湿地というのは、海と陸をつなぐ場所。世界中で最も多様な生物が暮らす環境でもあります。もうね、読んでるうちに、これを映像で見たい!ってなります。・・・実際、映画化されて、すでにロードショー終わっちゃったんだけど・・・

 その湿地で暮らす少女のカイアの成長。。。

 50年代の湿地エリア。そこは”貧しい白人”とか元逃亡奴隷とか、住み着いたもん勝ちの場所。保安官さえ「あそこに住んでる連中のことは把握してない」、なんて言っちゃう。それぞれに、電気もガスもないような暮らしをしている。

 カイアの一家もそうだ。で、父親は酔って暴力。耐えかねて、兄姉たち、母親が出て行き、そして最後は父親自身も、6歳のカイアを置き去りにして出て行ってしまう。カイアはそれから、湿地の自然とともにたったひとりで生きていく。カイアは学校も1日でやめてしまう。街に出れば、根深い偏見と差別にさらされるからだ。教育委員会が来ても、湿地の中、森の中に身を隠し、あるいは、迷路のような水路をモーターボートで移動するカイアを捕まえることはできない。カイアは一人で生きる。69歳で亡くなるまで、その湿地に抱かれて。

 でも、カイアが生きて来られたのは、愛情深くカイアに寄り添う支えてくれる人がいたからなんだよね。やさしい黒人夫婦と、後に伴侶となる少年テイト。キーワードは、置き去り、ひとり、孤独、とかが繰り返されるんだけど、それが一層、愛情とか思いやりとかを際立たせる。

 人を愛していいのか?、他人を受け入れてもいいのか?、この人も私を置き去りにして去って行くのではないか?、カイアの中で何度も繰り返される問い。

 ”誰かに贈り物をする喜び”っていう表現が、私にはグッときました。

 カイアに字を教え、ずっと寄り添ったテイト。なんと、カイアは大人になると、湿地に住む生き物たちの生態を辞典のように描き続けて、立派な作家になっちゃうんだ。えらいぞ、テイト。

 でも、もちろん、カイアの愛情への飢えを逆手にとって、ひどい裏切りをした男もいる。その彼が死体で発見されるとカイアは殺人の疑いをかけられる。え?、いくらなんでも、こんなんで殺人罪の立証はムリでしょ?。そもそも事故じゃないの?。誰かが彼を突き落としたなんて、証拠はなし、証言もあやふや。。。

 しかし、そこは陪審制のおそろしさ。裁くのは長年、カイアに偏見と差別、いじわるな悪意を向けてきた村の住民たち。もうね、法廷でのやりとりはほんとドキドキしましたよ。カイア、無罪。おめでとう。さあ、湿地へお戻り。そして、寿命が尽きるまで、湿地に抱かれてお暮らしなさい。静かに、愛する人とともに。。。

 

 で。・・・あれ?、でもやっぱり殺した・・・?、ちょっとカイアってば~・・・

 カイアの生涯を読者として伴走するだけで充分にすてきな読書体験だった。それでも、やっぱり、他者が踏み込むことのできないエリアが、人の心にはあるよね。

 

 ・・・なんか、まとまりがつかなくなりましたが、ここで終わります。そろそろ出勤です。行ってきます!!!