50代新人看護師、保育園に行く。で、ときどき落語

日々の雑感、お仕事や落語・・・

たたく子のこと。。。さみしさがたまると?

『ピッピちゃん、このところ、荒れてるんですよね・・・』先生たちの間でそんな会話が交わされる。

 ピッピちゃん(仮名)は2歳9ヶ月の女の子。一昨日から荒れている。時間は夕方。うちの園では、保護者のお迎えラッシュが始まると、3歳未満の子どもたちを一部屋に集めてしまうのだが、人口密度が高くなって、それぞれ勝手に遊ぶ時間帯になる。

 ピッピちゃんが、”荒れる”というのは、保育士をたたくのだ。それから、積み木やブロックの入ったカゴをひっくり返したり、積み木やブロックを投げたり。。。

 え?、かわいいもんじゃないの・・・?。と思うかもしれないが、なかなかの激しさである。それもニコニコ笑いながら、楽しくてたまらん!という表情で、保育士の顔をバシッとたたいてくるのだ。

 さあ、そういうときに保育士はどう対応するか。言葉と表情で諭すのである。決して、強く叱ったりはしない。しっかり、顔と顔を向き合わせて、『痛いよ、ピッピちゃん。やめてね。大人だって、痛いんだよ』・・・などと言いきかせる。

 しかし、ピッピちゃんにはこれが通用しない。ますます、楽しくなってしまうようで、ニカ~ッという悪だくみの笑みを浮かべて、さらにたたいてくる。本当に痛いし、危険だ。。。私はメガネをかけているが、メガネをむしり取って投げ捨てたりもする。

 もちろん、たたかないようにピッピちゃんを離すことはできるが、そうすると今度は、積み木やブロックを周囲に投げ始める。いちおう、他の児がいない方向を狙って投げているようではあるが、しかし、危ない。これも放っては置けない。また、言葉と表情で諭す。しかし、通じない。また、たたいてくる。・・・この繰り返しになってしまう。

 

 『ピッピちゃん、さみしさがたまると、やっちゃうんですよね。たっぷりかあってあえられればいいんだけど・・・』とキラリ先生(仮名)。

 たしかに、そうなんだとは思う。しかし、それだけか?。大人の注意を引きたい、かまってほしい、というアピールではあろうが、それにしても。。。ピッピちゃんは、相手が痛がっている、いやがっている、という表情が読めない、あるいは共有できないといった問題があるのではないか?

 

 今日は、キラリ先生がピッピちゃんの標的になった。いくら、ピッピちゃんの気分を変えようとしてもうまくいかない。子どもとの接し方がすごく上手なキラリ先生が、バッシバシ容赦なくたたかれ続けて、マジで困惑している。。。

 正直、そばにいた私はうんざりだった。ピッピちゃん、やっぱりヘンなんじゃないの・・・?、と思った。キラリ先生から引き離されたピッピちゃん、今度は大きな固いブロックを投げ始めた。マジであぶない。

『ピッピちゃん、今のはダメだよ。あぶないよ』と私。やや強い語調で諭す。もちろん、それでストップはしない。他の先生も、なんとかかんとピッピちゃんの気持ちを変えようとしている。しかし、止まらない。その時だ。

 ・・・ピッピちゃんの目に一粒の涙。

 あいかわらず、ニマ~ッという笑顔を崩さず、周囲を困らせ続けるピッピちゃんの目に一粒だけ涙・・・

 

 私はそこで、他の業務が入り、30分ほどその場を離れた。

 で、戻ってみると、みんな、お迎えが来て、保育室にいる子ども数はだいぶ減っている。閑散。。。

 ピッピちゃんも落ち着いており、部屋の隅に寝そべって、ぼんやり電車のオモチャをいじっている。エネルギーを使い果たした感じだ。いつも、ピッピちゃんはひとりで遊んでいる。

 さみしさがたまっちゃってたのかな・・・?。キラリ先生の言葉がよぎる。

『ピッピちゃん、また明日遊ぼうね』と私がそばに膝をつくと、ピッピちゃんは起き上がって、まっすぐ私に抱きついてきた。。。そのストレートな反応に、ちょっと戸惑う私。背中をポンポンしているうちに、ピッピちゃんはあっさりと私の膝から降りた。ふたりで何度かハイタッチを交わす。『バイバイ』とピッピちゃん。

 ばいばい。また明日、遊ぼうね。たくさん遊ぼうね。